乗ってわかったクルーズ人気の理由1「非日常空間」

英国船は“静かな邸宅”、伊船は“陽気なフェスタ会場”

「クルーズ船って、どこも一緒ではないか?」。かつてはそう思っていた。でも2隻目に乗った瞬間、すぐに気がついた。「これは、まったく別の旅だ」。一歩乗り込んだ瞬間の「空気」が違った。

2年前の人生初のクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号(以下、DP)と、2度目のイタリア船籍のクルーズ客船MSCベリッシマ号(以下、MSC)。どちらも海の上での非日常を体験できる素晴らしい旅だけれど、まるで性格が違う。そしてその「性格」が、そのまま乗る人の気分や印象を左右するのだと知った。

DPは、こぢんまりとしたサイズ感が特徴(約11万6000トン)。落ち着いた雰囲気と細やかなサービスが提供され、静かな時間を重視し、ゆったりとした旅のペースが魅力となっている。どこかクラシカルで落ち着いている。静かなホテルにチェックインしたような、ゆったりした時間の流れを感じた。乗客同士の会話も穏やかで、廊下ですれ違うと「Excuse me」が自然に出てくる。廊下の椅子には、新聞を読んだり、本を片手に紅茶を楽しんだりするシニアがいて、大袈裟に言えば、英国のマナーハウスに滞在しているようだ。

一方、昨秋に乗ったMSC(約17万1000トン)は、その巨大な船体が特徴で、まるで街の中を歩いているような感覚だ。多彩なエンターテインメントや広々とした施設が揃っており、豪華さと楽しさを兼ね備えた体験が提供されている。乗船の瞬間から「ボンジョールノ〜!」という挨拶が飛び交い、笑顔と音楽に包まれる。クルーも乗客もよく喋り、よく笑い、すぐに踊る! まさに“海の上のラテンフェス”だ。

停泊するMSC、夜景を背景に

写真提供=筆者
停泊するMSC、美しい夕景を背景に
MSCの海の見える部屋

写真提供=筆者
MSCのバルコニー付きで海の見える部屋(筆者の部屋ではない)

乗ってわかったクルーズ人気の理由2「ドレスアップ」

ドレスコードにも文化の違いが滲む

DPのフォーマルナイトは本気度が違った。男性はタキシード、女性はロングドレス。着物姿の婦人もちらほら(DP柄のオリジナル帯を巻いた婦人も見かけた)。年配の方々もきっちり正装していて、その姿がまた絵になる。「上質な空間を守ろう」という意識を感じる。筆者もロングドレスが着られるようにダイエットしてからクルーズに臨んだ。

一方MSCでは、ドレスコードも“陽気な自由さ”が炸裂。フォーマルナイトなのにTシャツ短パンの方もいて、「自由ってこういうことか」と思わされた。もちろんしっかりドレスアップしている人も多いけれど、テーマカラーに合わせた仮装パーティのようなノリもあり、全体的に「楽しければOK」という雰囲気だ。

例えばある夜は、白い衣装でディナー、その後、甲板で踊る「ホワイトナイト」なるものがあった。まるで何か宗教集団の夜会のようでもあったが、思い切って輪の中に入って踊ってみたら、あら楽しい。「私、知らない人たちと船の甲板で踊っちゃってる」「どうしちゃったの、私」。そんな感じだ。翌日のトロピカルナイトにも、もちろん参加した。

白い服を着て踊るホワイトナイト。

写真提供=筆者
白い服を着て踊るホワイトナイト